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法律コラム
2021.03.17

自動車保険の弁護士特約について(続)

前回ご紹介した、弁護士特約制度が本来予定していたと思われる事例に引き続き、本来予定していたとはいえない場合につき、お話しします。それは、物損事件の場合です。交通人身事故の件数の減少がよく報道されていますが、物損事故の件数は、それほど大きく減少していないのではないかと思われます。弁護士特約付きの案件で弁護士会から回ってくる事件も、物損事故がかなりの割合を占めています。
 交通事故では、双方に過失があることが多く、過失割合が主な争点であることが多いです。物損事故では、なおさらそうなります。通常なら当事者双方の保険会社が代理で交渉して、落ち着きどころを見つけます。しかし、中にはどちらか又は双方が全くおかしいことを言っていて、納得できない、どうしても落ち着きどころが見いだせないという例も出てきます。そういう時に、弁護士に相談してどう解決されるか、自分の言い分は通るのか、知ることができれば便利です。自分の言い分を通すためには、弁護士の力を借りることが必要で、そうできなければ、納得いかない解決も受け入れざるを得ないということも出てくるかもしれません。

 

 物損事故は、人身事故に比べて一般的に被害額が小さいです。もっとも、自動車の高級化や、いろいろなデバイスの導入により、結構な金額に上る例もありますが。この比較的金額が小さいというところで、弁護士特約が意味を持ってくるのです。人身事故では、慰謝料というものがあって、治療費のような実際に支出されたものでない分が必ず支払われますから、被害者の手元に残る額がある程度あります。だから傷害が重ければ、弁護士費用を自腹で支払っても、それに見合う取得金があることが多いです。これに対し、物損事故では、修理費と代車費用くらいしか出ないのが普通ですから、相手から支払われても、車を修理して代車費用を支払えば、手元に残る分はありません。それでは通常、弁護士費用を支払おうという気にならないでしょう。この時に弁護士費用を負担してくれるのが弁護士特約ですから、言ってみれば、弁護士特約は物損事故のためにあるようなものです。

 物損事故ではこのような状況ですから、弁護士の側も、依頼者に大した取得金がないので、弁護士費用を請求しづらいことになります。弁護士特約で保険会社から弁護士費用が支払われるなら受任しようと考えても、自腹で弁護士費用を支払う依頼者にはなかなか請求しづらいので、受任する気になりにくいでしょう。物損事故で訴訟にまでなる例は必ずしも多くないと思われますが、そういう例でも、弁護士特約がないと弁護士がついてくれなくて、自分の言い分を貫きたいと思えば、本人訴訟をするしかない可能性も出てくるのです。
このように、弁護士特約は身近な物損事故にこそ役立つ保険といえるかもしれません。

 

 弁護士特約制度は、自動車保険だけでなく、いろいろな領域に広がってきています。トラブルに見舞われやすい方は、検討の価値があるかもしれません。

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